「叱れば叱るほど問題行動は続く」失敗ばかりの部下を叱っても無意味!アドラーに学ぶマネジメント術【岸見一郎】
『アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか』より #2
■叱られても注目されたい
「注目されるために失敗するなどありえない」と思う人もあるかもしれませんが、子どものことを考えてみてください。母親から注目されたいがために、危ないことをして転んでみるといったことは往々にしてあります。同じことを大人になってからも自分では気づかずにしているのです。
もしも部下が本人も意識しないままに、上司の注目を得るために失敗をしているのであれば、叱られるという形で注目を得ようとしているわけですから、叱ることは有効ではありません。さりとて、失敗した時に何もしなければ、部下は注目されるためにいよいよ失敗を続けてしまいます。
部下を叱ってみても、同じことが続くのであれば、叱ることの程度が足りないのではなく、叱ること自体が無効なのです。このことを認めることができない人は多くいます。
教育やしつけの観点から、叱ることは必要だ、間違ったことをした時は叱るのが大人や上司の役割だと息巻く人も多いです。
しかし、小さな子どもでなければ、自分がしている行動が叱られるものであることを知っているはずです。叱られたくはないけれども無視されるくらいなら叱られた方がいいとか、いい結果を出すことでは注目されないのだから、せめて叱られるようなことをして注目を引こうとする、いわば確信犯なのですから、そのような人に対して叱れば叱るほど問題行動は続くことになります。
〈『アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか』より再構成〉
文:岸見一郎