「叱れば叱るほど問題行動は続く」失敗ばかりの部下を叱っても無意味!アドラーに学ぶマネジメント術【岸見一郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「叱れば叱るほど問題行動は続く」失敗ばかりの部下を叱っても無意味!アドラーに学ぶマネジメント術【岸見一郎】

『アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか』より #2

■叱られても注目されたい

「注目されるために失敗するなどありえない」と思う人もあるかもしれませんが、子どものことを考えてみてください。母親から注目されたいがために、危ないことをして転んでみるといったことは往々にしてあります。同じことを大人になってからも自分では気づかずにしているのです。

 もしも部下が本人も意識しないままに、上司の注目を得るために失敗をしているのであれば、叱られるという形で注目を得ようとしているわけですから、叱ることは有効ではありません。さりとて、失敗した時に何もしなければ、部下は注目されるためにいよいよ失敗を続けてしまいます。

 部下を叱ってみても、同じことが続くのであれば、叱ることの程度が足りないのではなく、叱ること自体が無効なのです。このことを認めることができない人は多くいます。

 教育やしつけの観点から、叱ることは必要だ、間違ったことをした時は叱るのが大人や上司の役割だと息巻く人も多いです。

 しかし、小さな子どもでなければ、自分がしている行動が叱られるものであることを知っているはずです。叱られたくはないけれども無視されるくらいなら叱られた方がいいとか、いい結果を出すことでは注目されないのだから、せめて叱られるようなことをして注目を引こうとする、いわば確信犯なのですから、そのような人に対して叱れば叱るほど問題行動は続くことになります。

『アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか』より再構成〉

 

文:岸見一郎

 

KEYWORDS:

オススメ記事

岸見一郎

きしみ いちろう

哲学者

哲学者。1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。専門の哲学に並行してアドラー心理学の研究をしている。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(以上、共著、ダイヤモンド社)、『アドラー心理学入門』『アドラーに学ぶ  人はなぜ働くのか』(KKベストセラーズ)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『アドラー 人生を生き抜く心理学』( NHK出版)、『人生を変える勇気』(中央公論新社)、訳書にアドラーの『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(以上、アルテ)など多数ある。

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか (ベスト新書 617)
アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか (ベスト新書 617)
  • 岸見一郎
  • 2024.11.26
アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)
アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)
  • 岸見 一郎
  • 1999.09.15
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
  • 岸見 一郎
  • 2013.12.13